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東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)48号 判決

原告

石原薬品工業株式会社

被告

武田薬品工業株式会社

右当事者間の昭和54年(行ケ)第48号審決取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

特許庁が昭和54年2月20日、同庁昭和49年審判第2450号事件についてした審決を取消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、次のとおり述べた。

原告は、登録第987343号商標(「オルガミン」の文字を横書きしてなり、第1類薬剤及び医療補助品を指定商品として昭和43年1月11日登録出願、同47年11月1日登録)の商標権者であるが、被告は昭和49年4月5日に原告を被請求人として右商標登録の無効審判を請求し(昭和49年審判第2450号)、特許庁は、昭和53年12月14日、右事件につき原、被告に審理の終結を通知し、昭和54年2月20日、右登録商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるとして右商標登録を無効とする旨の審決をし、その謄本は同年3月5日原告に送達された。しかしながら、原、被告間では前記審理終結通知前において、当時原告の代理人であつた小浜武夫弁理士及び原告会社代表者と被告間で示談交渉し、昭和53年9月中旬、被告は、審決が引用する被告の登録第483303号商標の使用を無償で原告に許諾するとともに本件登録第987343号商標の使用については被告の右商標権に基づき差止請求権を行使しない旨及び前記無効審判請求を取下げる旨の和解が成立し、小浜武夫弁理士は右和解に基づき無効審判請求の取下げについての同意書を作成して被告へ引き渡すこととなつていたところ、旬日を経ずして死亡し、同意書の引渡しがなされないまま審理終結の通知がなされたため、審判請求の取下げは不能となり(商標法第56条、特許法第155条第1項)、間もなく本件審決がされるに至つたものである。右の次第で、本件審決時には被告は本件商標登録無効審判請求をする利益を有せず、審判請求人としての適格を有しなかつたものであるから、その審判の請求についてされた本件審決は違法であつて取消されるべきである。

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求め、原告の請求原因事実はすべて認めると述べた。

理由

原告主張の請求原因事実は、被告のすべてこれを認めるところである。

右事実によれば、被告の本件商標登録無効審判の請求は、不適法却下の審決をすべきであつたにもかかわらず、本件審決は、本案について審理し、本件商標登録を無効としたものであるから、違法であり取消を免れない。

よつて、これを取消し、訴訟費用は敗訴の当事者である被告の負担とすることとして、主文のとおり判決する。

(杉本良吉 高林克巳 舟橋定之)

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